【ソウル=時吉達也】4月まで韓国最大野党「国民の力」のトップを務めた金鍾仁(キム・ジョンイン)氏(80)が産経新聞の取材に応じ、歴史問題をめぐる日韓間の協議停滞について「問題解決は次期政権でやってもらうほかない」と述べ、残り約1年となった文在寅(ムン・ジェイン)政権下での進展は困難との見方を示した。

 金氏は与野党を横断して主要選挙で党要職を務め、朴槿恵(パク・クネ)、文在寅両氏ら歴代大統領の政権奪取に貢献。「韓国のキングメーカー」の異名を持つ。昨春の総選挙で「国民の力」前身の「未来統合党」が惨敗したことを受け、期間限定で同党トップに就任、先月のソウル、釜山両市長選で野党を勝利に導いた。

 金氏は政権与党「共に民主党」について、政権奪取以降、「『(今後)20年、執権を維持する』などと傲慢な発言が目立った」と批判。先の両市長選における与党の敗因に関しては、「文在寅政権が市民にとって不快な政策を繰り返した」ことを挙げた。

 現政権下で停滞する日本との歴史問題解決に向けた協議については「両国とも、自国の国民を説得できる指導者が必要だ」と強調。米中対立などを念頭に「国際環境に変化があり、日韓の利害関係も変化した。それらをすべて再検討すれば、両国の最大公約数(として合意できる点)が計算できる」と指摘した。

 来年3月に予定される次期大統領選をめぐっては、「6、7月ごろまでには選挙戦の輪郭がはっきりする。現時点で私から話すことはない」と述べるにとどめた。野党候補として取り沙汰される尹錫悦(ユン・ソンヨル)前検事総長についても「最も先行しているが、本人が態度を明らかにしていない。様子を見なければならない」と慎重な見方を示した。

 与野党の候補予定者らが金氏に相次いで面会を要請しているとの報道に対しては「本当に立派な候補が出てきて大統領になる、というならすべてをなげうって助けるかもしれないが、そうでなければ(参謀役を)絶対にやらない」と断言した。



金鍾仁氏 1940年、ソウル生まれ。大学教授などを経て、国会議員5期。朴正煕(チョンヒ)大統領のブレーンを務めて以降、歴代大統領の助言役として存在感を示す。李明博(イ・ミョンバク)政権の支持率が低迷した2012年には与党トップの朴槿恵氏の下で選挙対策を主導、総選挙に勝利。同年大統領選での朴氏当選につなげた。一方、16年には左派系「共に民主党」の文在寅代表から招請され、暫定トップの非常対策委員長に就任し同年の総選挙で勝利。昨春から今年4月まで野党「国民の力」(就任時は「未来統合党」)」の非常対策委員長。

産経ニュース 2021.5.2 19:25
https://www.sankei.com/smp/world/news/210502/wor2105020010-s1.html

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金鍾仁(キム・ジョンイン)氏=4月20日、ソウル市内(時吉達也撮影)