政府は、事実上の「空母化」に向けた改修を進める海上自衛隊の護衛艦「いずも」で、米軍の最新鋭ステルス戦闘機「F35B」による発着訓練を年内にも実施する方向で検討に入った。米軍との将来的な共同作戦を想定したもので、東シナ海や太平洋への進出を強める中国をけん制する狙いがある。

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 いずもは海自最大級の護衛艦(全長248メートル、基準排水量1万9950トン)で、短距離滑走での離陸や垂直着陸ができる米国製F35Bの発着を可能にするため、改修を行っている。飛行甲板を耐熱塗装するほか、発着時に乱気流が生じないよう艦首の形状を変更する。改修は2回に分けて行われる計画で、1回目の耐熱塗装などは、おおむね終了したとみられる。

 政府の中期防衛力整備計画(中期防)では、2023年度までにF35Bを18機導入し、24年度から運用を開始することになっており、日本は現時点ではF35Bを保有していない。

 このため、既に米軍岩国基地(山口県岩国市)に配備されている米海兵隊のF35Bを使った発着訓練を実施し、改修した耐熱甲板などのテストを行う方針だ。米軍の運用技術を習得し、将来的には自衛隊のF35Bが米艦船で発着することも視野に入れる。

 中国は、19年12月に初の国産空母「山東」を就役させた。12年に就役した「遼寧」と合わせて空母2隻体制をとる。3隻目も建造中とされ、日本近海で空母や爆撃機による活動を活発化させている。

 これに対し、政府はいずもに続き、今年度末から「いずも型」の護衛艦「かが」の「空母化」に向けた改修に着手する予定だ。日米両政府はこれらの護衛艦を使って機動的に戦闘機の燃料補給を行うことで、航空作戦能力を高めたい考えだ。

 もっとも、「空母化」に向けて改修した護衛艦は原則として潜水艦の哨戒や医療活動、輸送に使用される予定だ。政府は戦闘機の搭載は訓練を除けば有事に限定するなど専守防衛の範囲内で運用するとしており、憲法9条との関係から保有が禁じられている「攻撃型空母」には該当しないとの見解を示している。

讀賣新聞 2021/07/27 15:00
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210727-OYT1T50355/