「母はコロナに感染して亡くなりましたが、阿鼻叫喚のさまでした。(母親の)危篤の知らせも看護師ではなくヘルパーさんから。病院に着いても、患者の家族でごった返しており立ち止まってくれる看護師がいない。ようやく防護服のようなものを渡されて病室に入ると、母の遺体は隅に放置されたままでした。

感染がわかってから最期まで面会はできず、亡くなってからは遺体はすぐに火葬するといわれてしまいました。家族の中で最期に母の顔を見ることができたのは私だけ。まさか自分の身にこんなことが起きるなんて思ってもいなかった」

回復の見込みのある患者が優先される事態に

知人の母親は享年89歳、主に高齢者が長期入院をする療養病院で入院生活を送っていたという。新型コロナウィルスの蔓延により通常の面会も制限されていたが、結局、院内感染で亡くなった。

 病院には新型コロナ患者のための陰圧室はなく、設備のある他の病院に転院しようとしたが、韓国では感染者の急増で病床が逼迫。回復の見込みのある患者が優先され、知人の母親は症状も悪化し高齢なことから転院は叶わなかったという。

 知人は言う。

「遺体は保健所に送られ、業者が密封してから火葬場に送ると言われました。ただ、新型コロナにより亡くなった人は火葬場を夕方5時以降しか使わせてもらえず、母の遺体が火葬場に運ばれたのは亡くなった翌日の午後。霊安室もない病院でしたから、遺体は病室の隅にそのまま放置されていたようで、もうなんと言っていいか分からない。

『K防疫』と浮かれて、病床も確保せず、政府は何をやっていたのか。ふざけるなと言いたい」

 韓国では新型コロナ感染者の増加に歯止めがかからない。11月1日、段階的に日常を取り戻す「ウイズコロナ」政策が始まった時は1日1000人台だった感染者数は12月に入り8000人近くに膨れあがり、今も5000人〜7000人台を行ったり来たり。首都圏での病床使用率は86%、夏には0.37%だった死亡率も0.84%(12月22日)にまで上がっており、80歳以上が死亡者の約13%を占めている。

 韓国は2015年に広がったマーズ(MERS、中東呼吸器症候群)を教訓に防疫体制を組み、これまで検査、行動経路確認、治療で新型コロナ感染の広がりを抑えてきた。致死率も抑えることができ、世界からも注目や賞賛が集まり、韓国政府はこうした取り組みを「K防疫」と誇ってきた。

「ウィズコロナ」政策を推し進め、感染者が急増
 11月1日からは、段階的に日常を取り戻す「ウィズコロナ」政策を推し進めた。飲食店などはQRコードなどを使った来店者の名簿作成が課せられたが、カフェなどの飲食店やカラオケも以前と同じように24時間営業が許可された。集まりもワクチン未接種者のみ最大4人までと制限されたが、接種者は制限なしにするなど規制を大幅に緩和した。

 飲食店からは年末の稼ぎ時を前に「ようやく一息つける」という声が漏れていたが、これをきっかけに感染者が急増。ただ、当初は「ウイズコロナ」により人の流れが増えて感染者数も一時的には増えるだろうと予想され、しばらくすれば落ち着きを取り戻すと言われていたが、状況はみるみる暗転。

 12月18日からは規制レベルを再び引き上げ、ワクチンパスを持たない人はカフェなどでの飲食は禁止となり、パス保有者の集まりも最大4人までに制限。飲食店の営業時間も原則夜9時までに短縮された。

 一体なぜこれほどまでに感染者が急増してしまったのか。鄭リ碩・翰林大学聖心病院呼吸器内科教授(前疾病管理本部本部長)は「『ウィズコロナ』開始の時期を見誤った」と指摘する。

「状況が悪い方向に向かっていたにもかかわらず、政府は、『ウィズコロナ』を行ってしまった。

『ウィズコロナ』の根拠となったのは、韓国全体での2次接種率が70%に達することでした。医学的に計算すると約56%の人々が抗体を確保したとされるからで、韓国では10月22日にこの数字に達しました。しかし、この少し前の10月中旬から重症患者数と死亡率がすでに上がり始めていた。

 専門家はみな規制を緩和させるのは早いと警鐘を鳴らしましたが、政府は、『ウィズコロナ』宣言をアドバルーンのようにあげて、しかも、段階的な規制緩和ではなく、最高レベルから最低レベルに大幅に緩和してしまった。人々にもうコロナは大丈夫という誤ったメッセージを出してしまったのです」

そして、「ワクチン供給の後れ」も挙げた。

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