海上自衛隊が11月に開く国際観艦式に招待された韓国の〝苦悶(くもん)〟が浮き彫りになっている。韓国国防部長官(国防相)が、野党議員に国会で追及され、「積極(的に観艦式参加を考慮している)という表現は合わない」と答弁したのだ。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、相次ぐ「反日」暴挙で日韓関係を戦後最悪の状態にした文在寅(ムン・ジェイン)前政権の負の遺産を清算したい考えとされる。ただ、韓国国内の反日感情は根深いうえ、尹大統領の支持率も低下しており、簡単に参加表明できない背景がある。尹政権は「お家の事情」を克服できるのか。

「報道内容の『積極』は正しくない」

韓国国防部の李鍾燮(イ・ジョンソプ)長官は29日、国会国防委員会に出席し、「国際観艦式への韓国海軍の参加を積極的に考慮している」との報道について、慎重な言い回しでこう否定した。

岸田文雄政権は、海自が11月に開催する「国際観艦式」に韓国軍を招待した。観艦式は約3年に1度、世界各国の艦艇を招き開くが、海自創設70周年にあたる今回は規模を拡大して、相模湾で開かれる。韓国を招待するのは7年ぶりで、岸田政権としては、韓国側の「反日」暴挙で冷え込んだ日韓関係を改善するお膳立てをしたといえる。

これに対し、韓国側の態度は慎重なようだ。

聯合ニュースや中央日報の報道によると、李長官は国防委員会で、「過去の慣例と歴史問題」「海自の自衛艦旗である旭日旗掲揚懸念」などを考慮し、参加を「総合的に検討して決めたい」と述べたという。

韓国では、旭日旗について、「日本の軍国主義の象徴」と勝手に主張する勢力がいる。2018年に韓国・済州(チェジュ)島で行われた国際観艦式では、韓国側が旭日旗の掲揚自粛を要請した。非礼極まる申し入れを受け、日本は参加を取りやめた。

先の国防委員会でも、革新系野党の国会議員が「旭日旗が掲揚された海自の国際観艦式に参加することは国民情緒上、不適切だ」と主張し、明確な方針をまとめるよう李長官に求めた。

一方、委員会では、日本と関係改善したい尹政権の心情もにじんだ。

韓国海軍の駆逐艦は2018年12月、日本の排他的経済水域(EEZ)内で、海自のP1哨戒機に「ロックオン」と受け取れる火器管制レーダーを照射してきた。日本側は強く抗議したが、当時の文政権は事実を認めず、逆に謝罪を要求してきた。

この件に絡み、中央日報は18日、文政権が、自衛隊機に「追跡レーダー(火器管制レーダー)」を照射するなど、積極的な対応を軍当局に指示する「事実上の交戦指針」をつくっていたと報じた。

李長官は委員会で、この方針について、「韓日関係を全体的に検討して(改定も)検討するのが正しい」と、見直しに言及した。

また、李長官は「2018年までは韓国が日本の観艦式に2回、韓国の観艦式に日本が2回参加した」「(日本艦船に)旭日旗が掲揚された状態で行われた」と述べ、過去には、旭日旗が掲揚された状態で、日韓双方が観艦式に参加した経緯があることも明らかにした。

韓国側の変化の背景に何があるのか。

日本政府高官は「経済的な行き詰まりなどから、尹政権が日韓関係の冷え込みを打開したいのは確かだ。ただ、韓国の国内世論を考慮すると『喜んで参加する』とは言いにくいのだろう」と話した。

防衛関係者も「中国や北朝鮮の脅威に直面し、自衛隊と韓国軍の現場レベルは『連携の重要性』で認識は一致している」と証言する。

ただ、相次ぐ「反日」暴挙の清算もせず、なし崩し的に関係改善することは、今後の日韓関係のためにも認められない。韓国側は、文前政権の「反日」暴挙のケジメを付けて、新たな一歩を踏み出せるのか。

朝鮮近現代史研究所所長の松木國俊氏は「韓国は旭日旗を『戦犯旗』と主張してきたが、国際的にはまったく通用しない『トンデモ理論』だ。米国は旭日旗をリスペクトしており、国際観艦式の参加国はどこも問題視していない。韓国内でしか通用しないでっち上げの『反日』理論だが、国民はこれを信じてしまった。韓国が対日関係改善に乗り出したのは、対中貿易が行き詰まりで経済的に落ち込んだことと、米国から『日米韓の結束を乱す』とにらまれるからだ。今回の国際観艦式は海自が主役で、旭日旗がクローズアップされる。韓国はこの理屈を国民に説明することを迫られている。自業自得で窮地に陥った」と語った。

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