シャインマスカットの流出に、中国専門家「日本の科学者に感謝している」―中国メディア

中国メディアの中国新聞周刊は19日、「狂ったブドウ:シャインマスカットは本当に値崩れしたのか」と題する記事を掲載した。

記事は、シャインマスカットは「爆発的な人気」を博すためのすべての資質を持っていると指摘。そのうちの一つとして長距離輸送や長期間の保存に耐えられ、1年のうちに少なくとも10カ月は店頭で販売することができる点を挙げた。一方で、2016年以降は少しずつ大衆的な果物へと変化しつつあるとし、その顕著な例が価格の低下だとした。

河北ブドウ・ワイン学会の李春雨(リー・チュンユー)副秘書長は「18年の春節(旧正月)が迫るころ、深セン市の市場で3房1箱の韓国産シャインマスカットが1万元(約20万円)近くで売られているのを見たが、今ではこうした光景は見られなくなった。中国のシャインマスカットの生産量が向上したおかげだ」と語ったという。

記事は、「シャインマスカットの人気は、ここ数年の『高級果物がネットで人気を博す』という道を歩んだ典型的なサンプルだ」と説明。「その背後には狂ったような富の誘惑があるだけでなく、中国の高級果物育成モデルの弱点も露呈している」と分析した。

■シャインマスカットの値崩れ、原因は?

記事によると、シャインマスカットは産地によって流通時期に差がある。江蘇省、浙江省、湖南省など南方の産地で7月から収穫されたシャインマスカットが集中的に市場に出回るのは8~9月。この時期が1年の中で最も価格が下がる時期だ。一方で、山東省や遼寧省のシャインマスカットは10月ごろから市場に出回るため、販売価格は夏季よりも上がるという。

李氏はシャインマスカットの価格が急落したことについて、16年以降に中国内で急速に作付面積が増加したことが背景にあると説明した。南京農業大学園芸学院の陶建敏(タオ・ジエンミン)教授はシャインマスカットの人気ぶりは苗木の価格からも明らかだとし、「昨年は苗木も入手困難だった。当初は1本あたり5~6元(約100~120円)だったが、昨年は20~30元(約400~600円)、あるいはそれ以上に高騰した」と話した。

また、栽培が急速に拡大した背景として、シャインマスカットは適応力の強い品種であることも指摘。ある農家は「適応力が強すぎて、高温多雨の南方でも乾燥した北方でも栽培できる」と語った。李氏は「モモの木やアンズの木は一般に栽培から3~4年後に豊作期に入るが、ブドウは造園から豊作までの期間が非常に短い。1年目の苗の管理が適切であれば、2年目には良好な生産量を確保できる。そのため、シャインマスカットの生産量は短期間で急速に増加した」と解説した。

さらに、栽培技術の普及も原因の一つだという。前出の農家は「かつてはある品種が中国に入った場合、栽培技術の普及に少なくとも十数年を要した。しかし、今では情報が急速に広まる。15~16年にシャインマスカットが市場に受け入れられたことで、18~19年には栽培技術体系がほぼ確立し、20~21年にはどこの農家でもその技術を把握できるようになった」と話した。

■シャインマスカットは2極化する?

李氏は、シャインマスカットの魅力は変わることはないと指摘する。「供給量が増加すると価格が変化するのは必然だ。しかし、価格の変化は単に価格が下がることを指すのではなく、市場による等級付けが行われることを指す」と説明。中国のデパートなどで販売されるシャインマスカットは依然として高値が付けられ、ハイエンドな消費者の需要を満たす存在だという。

李氏は「日本も同様だ。『晴王』や『大地のしずく』などは日本の農協が認定した果物の商標だが、日本のシャインマスカットのすべてが『晴王』や『大地のしずく』ではない」とした上で、「プレミア級の果物をつくるには生産場所に絶対的な優位性があることが必要。同時に、高額の投資で施設を整備し、極めて高い技術と厳格な生産フローを維持しなければならない。これらの条件は往々にしてコピーが不可能なものだ」と述べた。

雲南浙江雲南農業発展有限公司の郭峰(グオ・フォン)社長は「高品質のシャインマスカットの価格は依然として安定している。弊社ブランドの消費者向け価格は1斤(500グラム)60元(約1200円)前後で、特級などになると80~100元(約1600~2000円)になる。例年に比べて下がってはいない」と説明。郭氏はシャインマスカットの収益性は依然として高く、他の品種と比べても2倍ほどになるとし、「今後はブランドと非ブランドの間の分化がますます明確になる可能性がある」と語った。

https://www.recordchina.co.jp/b901468-s25-c30-d0052.html