常にセンターを取りたがる国民性、ソウルの地下鉄も降りる前に乗る
(立花 志音:在韓ライター)

・「ママ、幼稚園に行きたくない」

 幼稚園の年長になった娘が、朝から駄々をこねた。今までこんなことはなかった。

 生後19カ月から毎日ウキウキ保育園に通い、諸都合で2回も通園先が変わったが本人はへっちゃら。
誰に似たのか、世界中どこに行っても生き残れるだろうと思うくらい気が強い。高校生の長男にも果敢に戦いを挑む、怖いもの知らずである。

 そして常に、自分が一番前のポジションを取りたがる。筆者が子供の頃に夢中になったゲーム、ドラクエⅣには女性の勇者がいた。
30年以上の年月が流れ、海を渡って、今になって思う。あれはまさしくこの子のことだったんだなと。

 韓国人は、とにかく自分が第一ポジションを取りたがる。それはセンターを争うアイドルだけの話ではなく、一般市民の日常の至るところに垣間見える。

 まず、人の前を横切るのだ。日本人にはありえないこの行動を、韓国人は堂々とナチュラルに行う。
自分が通る道は自分のもので、そこに先客がいるとか、誰かが歩いているとかは、全く関係ない。

 退くのでは自分ではなく、相手である。自分ではない誰かが、自分に気を使えばいいのだ。

 その話を面と向かって彼らに話すと、必ず否定するが、こちらには確固たる証拠がある。

・地下鉄でも降りる前に乗るソウル市民

 筆者が住むマンションのそばに、大通りまでショートカットできる抜け道が新しくできた。朝の通勤時間にはたくさんの車が大通りに向かっていく。
その大通りと抜け道がぶつかるところには、横断歩道はあるものの信号はない。

 そこで、筆者は車と接触したことがある。幸い徐行運転だったので、けがはなかったが、その車の運転者はこう言った。

「いやー、すみません、車があっちから来るかだけを見ていて……。人がいるのは見えていたんですけど、渡ってくるとはまさか思わなかったんですよね」

 ほら見ろ。筆者の言う通りではないか。

 そして、ソウルで地下鉄に乗ってびっくりするのは、降りる前に人が乗ってくることだ。これはソウルに行ったことのある人なら、ほとんどの人が体験しているだろう。

 それから昨年、義父が入院した時に見たものは、エレベーターでも先に乗ろうとしている人の姿だった。

 韓国人に接して20年の筆者は、このような場面に直面した時、「降りる人が先でしょう」と大きめの声で言いながら降りる。
すると大体の人は「しまった」という表情になる。人に言われるまで分からないらしい。

 そんなところで、ポジションを取ったところで何の得にもならないと思うのだが、とにかく人より先に行きたいのだ。本能と言うべきか、民族性と言うべきか、文化であろう。

 話をもとに戻そう。なぜ幼稚園に行きたくないのか、娘に聞いてみると、絵を描くのが嫌なのだと言う。

ー中略ー

 そして昨日の夜、夫の帰りが遅かったので、寝る前に次男と娘に絵本を読んであげることにした。
何気なく手に取った社会探検シリーズの絵本は「地下鉄の駅に行こう」だった。読み進めていくと、ソウルの地下鉄に乗るシーンが出てきた。

「人々は地下鉄を待ちます。ホームドアの前に、列を作って待ちます。(中略)地下鉄から人々が降ります。
人々がみんな降りたら、待っていた人たちは地下鉄に乗ります」と書かれていた。そうか、みんな知っていることは知っているんだ。

 2年ほど前に買ったシリーズなのだが、この本は初めて読んだ。なんとも言えず、筆者は笑うのをこらえた。日本でしか地下鉄に乗ったことのない子供たちは、ふむふむと聞いていた。
10年後、この子たちが見るソウルがこの絵本のような姿でありますように。

全文はソースから

2023.4.26(水)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74925