建国以来の最大の「就職危機」

北京改革開放発展研究会メンバーで、国家経済政策のための調査などにも何度も参画してきた王明遠が、国内の研究者の調査をもとに自身の推論として「青年」世代の失業者が5400万人と個人SNSのアカウントで発表した。

前編『中国の若者を「大就職氷河期」が襲う!体制派エコノミストが試算した、失業者数「5400万人」の衝撃』で紹介したように、中国はこれから未曽有の大就職氷河期を迎えようとしている。

その原因は、習近平体制の「ゼロコロナ政策」がありそうだが、これからの中国経済の先行きに光は見えてこない。それは経済音痴の習近平の「デジタル・レーニン主義」とも無縁ではないだろう。

中国経済は、いま最大の危機を迎えているといっても過言ではない。

(略)

失業者を吸収できない中国経済の苦境

就職難問題は、経済の一つの発展周期の終わり、あるいは転換期に生じるという見方がある。中国のこれまでの経済成長メカニズムや環境下での成長はいったん頭打ちになり、今ある経済システムや環境の欠陥を修復、調整して初めて、次の発展周期に入る、という考えだ。

これまでの就職難も、そうして経済システムの欠点、体制の問題を修復、調整する形で乗り越えてきた。だが今回は、ちょっとしたシステムの欠点の修復や調整ですむ規模ではないのではないだろうか。

今の就職氷河期は新型コロナ蔓延による経済の停滞が一つの原因と言われている。実際、コロナ蔓延後、新規雇用数は毎年急減少している。

だが、それ以上の要因は習近平の経済政策であろう。

新規雇用が激減した背景には、高学歴の若者の就職の受け皿であったインターネットプラットフォーム、不動産、金融、観光、教育産業の停滞がある。

アリババ、テンセント、美団、百度などの民営大企業が軒並み9%前後のリストラを行った。

オンライン旅行サービスプラットフォームの携程の2022年のリストラ率は27.3%。A株上場の57社の不動産企業中、28社が20%以上のリストラを行った。

中には70%以上のリストラを行った不動産企業もある。

上場企業ですらこのありさまだから、非上場企業は推して知るべしだろう。

これら企業の苦境は2020年の習近平の不動産バブル退治政策や、教育改革、インターネットプラットフォーム企業の独占禁止法行為に対する取り締まり強化政策、また外交関係悪化による外資の撤退や、外国や外国人との往来、観光、ビジネスの縮小などが影響している。

経済をないがしろにした「大きなツケ」

習近平の経済政策の方向は、この10年、経済の計画経済回帰路線、「国進民退」(国有化奨励民営後退)路線で、過去二度の就職難問題の処方箋であった民営化奨励とは逆方向だ。

国有企業や政府公務員、政府プロジェクトによる雇用創出での解決を期待する向きもあるが、過去10年の間で、GDP1%あたりで国有企業は185万人の雇用をつくりだしたが、民営企業は636万人の雇用を作り出してきた。雇用創出力は圧倒的に民営企業の方が上なのだ。

農村の村おこしに新卒者を活用しよう、などという政策もあるが、農業総生産はせいぜい1兆ドル規模で、これはファーウェイ10個分の売り上げ規模。せいぜい100万人から200万人の高学歴人材を吸収するくらいが関の山だ。そもそも国有企業と政府や政府プロジェクトの雇用規模拡張は、体制の機構の肥大化問題、低効率や財政赤字問題を引き起こしやすいということもわかっている。

したがって、今の超就職氷河期問題の処方箋としては、習近平第三期の経済政策の方向性を180度転換して民営企業をもう一度活性化させるしかない。

だが、そんなことが習近平体制下であり得るのだろうか。

デジタル・レーニン主義がたどる「いばらの道」

民営企業の花形産業はデジタル産業だ。

だが、習近平は新型コロナ政策で、デジタル技術を人民に対する監視管理ツールとして利用し、デジタル・レーニン主義に象徴されるような自由を奪う技術のイメージを与えてしまった。

これが、外国企業や投資家たちが中国のデジタル経済圏の民営企業とかかわりづらくし、中国デジタル経済の発展が停滞し始めた理由だ。私は、今の習近平が経済政策の主導権を握っている限り、民営企業の活性化も中国デジタル経済のさらなる飛躍もあり得ないと考えている。

全文はソース

(福島 香織)
https://gendai.media/articles/-/111591