>その「こゑ(声)」の使ひ方において中国語の「比」と英語の"be"や"by"が、そのまま対応している

中国語としての「比」と同様に、日本語としては「ひ」のこゑ(声)で取り込まれてつか(使/仕/遣)はれている中国語の「被」は、中国語の表現解釈においては「漢字の成り立ち」が重視されるという規範を無視するなら(この場合、それを無視する必要すらなく、「衣・皮」が喩として用ゐられていることを適切に解釈すれば済む話だが)、その中国語としての発声と用法から見て、「比」の活用形であり、英語の"by"やドイツ語の»bei«にそのまま対応している。
私は、「比」が"be"や"by"と同じく、「臨在を意識させる」ように用ゐられていると説明してきたが、それに関連して中国語の「被」の用法についても、とても興味深く、示唆的な実例が、偶々、今、目を通している中国語の参考書に記載されいたので、引用させてもらう。

>動詞"自杀 zìshā"[自殺する]を受け身にした「被自杀」は「本当は自殺ではないのに、自殺だということにされる」という意味です。これは("被"の後の部分で示される)事実と異なる別の形にさせられることを表す、比較的新しい用法だと言えます。
『これならわかる中国語文法』、NHK出版、p.243