ところで、一般に、日本語の表現だけについて考へる場合でも、このように間に別言語の表現を挟んでみると、そのことばが伝へている捉へ方がはっきりと意識されて、自ずと関係するネットワークが浮かび上がってくることが少なくない。
例えば、日本語で、「海(うみ)」、「薄(うす)」、「失(う)せ」、「嘘(うそ)」とただ並べてみるだけでは、「う」のこゑ(声)が共通していることが意識されるだけだが、ここで、例えば、ドイツ語を利用して、「海(うみ)」≒»ausgefüllt«と置いてみれば、これらの表現が一気にネットワークを形成しているように感じられることになるだろう。