米アップルのような華々しい「黒船」ではない。だが、スマホで重ねてきた改良作業をもとに、停滞する日本のパソコン市場でイノベーションを仕掛ける。中国のIT大手、華為技術(ファーウェイ)の日本市場における目標は「生き残ること」だ。【尾村洋介/統合デジタル取材センター】

◇世界スマホ市場で3位 サムスン、アップルを追う

 ファーウェイは、人民解放軍を退役した任正非氏が1987年、40代半ばで創業した。当初はメーカーではなく、通信機器の販売代理業だった。現在は通信事業者向けネットワーク事業、法人向けクラウド事業、消費者向け端末事業を世界規模で幅広く手がける。

 世界のスマートフォン市場では韓国サムスン、米アップルに次ぐ、第3位に成長した。中国ではシェアトップを維持し続けている。

 2016年のグループ売上高は、前年比32%増の5216億人民元(約8兆7316億円)、最終(当期)利益が同0.4%増の371億元(約6211億円)。この売上高は、日本のソニー(7兆6032億円)、パナソニック(7兆3437億円)と同規模だ。

 また、ファーウェイは研究開発(R&D)を重視しており、16年のR&D関連で764億元(約1兆2789億円)を投資している。

◇退役軍人の創業者 「後発組」のユニークな経営手法

 ファーウェイは株式市場に上場していない。また、創業者・任氏はメディアの取材にはほとんど応じていない。その独特の経営スタンスは、同社のアドバイザーの田濤、呉春波の両氏が執筆した「最強の未公開企業ファーウェイ 冬は必ずやってくる」(東洋経済新報社)から何とか、うかがい知る事ができる。

 同書で紹介されている任氏の言葉は、例えば以下のようなものだ。

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 <いつも上位を狙ったり、首位を無理矢理奪おうなどと、博打(ばくち)の誘惑に駆られてはならない。ヒマラヤの頂上はとても寒く、そこで生き延びるのは難しいのだ。ファーウェイの最低限かつ最高の戦略は『生き延びる』ことである。他社より長く生き延びることができれば、既に成功者なのだ>

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◇SIMフリースマホに注力 パソコン市場にも本格参入

 日本では05年、現地法人ファーウェイ・ジャパンを設立した。Wi−Fi(ワイファイ)ルーター販売をとっかかりに、ここ数年は「SIMフリー」のスマートフォンに力を入れている。通信用のSIMカードを入れ替えれば、どの通信会社の回線でも使える利便性がウリだ。

 調査会社IDCジャパンによると、日本のスマホ市場でファーウェイのシェアは2.5%と、第7位(17年第1四半期=1〜3月)だ。アップルが50.1%と圧倒的で、京セラ、シャープ、ソニー、富士通など日本勢が続くなか、ファーウェイは、SIMフリー端末などで健闘、一定のシェアを確保しているといえるだろう。

 IDCジャパンの菅原啓アナリストは「国内SIMフリー端末の市場が成長する流れを受けて、ファーウェイのシェアも緩やかながら拡大する基調にある。だが、今後のさらなる成長には、どれだけ多くの通信事業者と密接な協力ができるかがポイントとなるだろう」と指摘している。

 さらにファーウェイは、スマホの普及などの影響で縮小に転じているパソコン市場にも後発組として参入した。日本では昨年、キーボードが本体から取り外し可能で、タブレット端末としても使える「2イン1」型の「Matebook」を発売。

 さらに今年7月には「クラムシェル(折りたたみ式)」型の薄型ノートパソコン「Matebook X」を投入し、日本のPC市場に本格参入した。Matebook Xは、ウィンドウズ10を搭載し、市場想定価格は14万4800円からとなっている。

◇日本法人副社長が語るスマホとパソコンの戦略

 日本におけるファーウェイのデバイスビジネスを統括する呉波ファーウェイ・ジャパン副社長は、日本での目標をやはり「生き残ること」と強調する。任氏の考えに沿ったものだ。

 呉氏は03年にファーウェイに入社。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170806-00000070-mai-bus_all

>>2以降に続く)