アナール学派は、20世紀に大きな影響力を持ったフランス現代歴史学の潮流のひとつ。
「アナール」は「年報」の意味で、幾度か誌名を変えながら現在でも発刊が続くフランスの学術誌『社会経済史年報』に集まった歴史家が主導したために、この呼び名がある。
旧来の歴史学が、戦争などの政治的事件を中心とする「事件史」や、ナポレオンのような高名な人物を軸とする「大人物史」の歴史叙述に傾きやすかったことを批判し、見過ごされていた民衆の生活文化や、社会全体の「集合記憶」に目を向けるべきことを訴えた。
この目的を達成するために専門分野間の交流が推進され、とくに経済学・統計学・人類学・言語学などの知見をさかんに取り入れた。
民衆の生活に注目する「社会史」的視点に加えて、そうした学際性の強さもアナール派の特徴とみなされている。