「外国人参政権を認める条例は撤廃されなければならない。武蔵野市だけの問題ではない。他の地方自治体に広がる可能性がある」

4日午後2時、東京都武蔵野市の井の頭公園。桜井誠「在日特権を許さない市民の会」前会長が代表を務める極右政党「日本第一党」の集会に参加した人たちが声を上げた。

集会を終えた100人ほど(主催者集計)は30分後、「武蔵野市外国人住民投票条例絶対反対」という横断幕を持ち、街頭に乗りだした。デモ行進が吉祥寺の交差点に到着した頃、彼らのヘイト活動に反対する人たちによる奇襲デモが始まった。

「ヘイトスピーチ」(特定集団に対する公の場での憎悪発言)に反対する「カウンター行動」(反対行動)を始めた市民たちは、「外国人も一緒に暮らす住民だ」「差別はもうやめろ」と叫んだ。週末を迎え外出した人の波まで重なり、吉祥寺駅近くで一時騒動が起きた。

この騒動が起きた原因は、武蔵野市が主要な政策を決める際に外国人にも投票権を認める条例の制定を推進したからだ。

市は5年を超える議論の末、18歳以上の市民で住民登録をしてから3カ月たった人には、国籍を問わず投票に参加することを可能にする内容を骨子とする「住民投票条例案」を作り、先月19日に市議会に提出した。

そのため、外国人留学生や技能実習生も、自分の市の主要政策の決定に参加できるようになった。松下玲子市長は記者会見で、住民投票から外国人を除いたり在留期間を制限する特別な合理性は見いだせず、多様性を認める都市を作るのが目標だと述べた。

市議会は21日に本会議を開き、条例案を処理する予定だ。1日時点の人口は14万8142人で、外国籍者は約2%の3098人だ。

すると、右翼団体だけでなく、政権与党の自民党まで出てきて、条例案の撤回を求めた。自民党外交部会の佐藤正久会長は、自身のSNSに「やろうと思えば、15万人の武蔵野市の過半数の8万人の中国人を日本国内から転居させる事も可能」だと書いた。

日本国内の「反中国感情」を悪用し恐怖を助長したのだ。「外国人やマフィアの集団移住」「韓国人ヤクザ…」「住民ではない人も投票可能」など事実に反する内容が記載された印刷物も市内各所で配布されている。

日本最大の日刊紙「読売新聞」も2日の社説で「長く日本に居住しているわけではない人が、日本人の考え方や習慣を十分に理解せず、政治的な運動を展開したり、票を投じたりする事態につながらないか」懸念されると指摘した。

市は困惑を隠せないでいる。2006年に神奈川県逗子市、2009年に大阪府豊中市でも似た条例が作られたからだ。それから10年以上の歳月が流れたが、外国人が急増した事例は観察されなかった。

むしろ、日本の経済規模(世界第3位)や国際的な地位を考える場合、外国人参政権の認定に極めて消極的だという指摘が出ている。

韓国の国会立法調査処の「外国人地方参政権の現況と示唆点」(2021年)と日本の国立国会図書館の「外国人参政権をめぐる論点」(2008年)などの報告書によると、韓国・スウェーデン・ロシアなど38カ国は、地方選挙で外国人投票権を認めている。

日本では、在日コリアンが地方自治団の首長と地方議会の議員を選ぶ地方選挙の投票権を要求し、訴訟まで起こしたが、1995年に最高裁で敗訴となった。裁判所は敗訴判決を下しながらも、立法を通じて外国人に投票権を付与することは憲法上禁止されていないと判断した。

にもかかわらず、日本政府はまったく動いていない。日本では地方選挙の投票権はもちろん、住民投票の導入も極めて低調だ。全国の1741の地方自治体のうち住民投票制度を導入したのは78自治体、このうち43自治体だけが外国人に投票資格を与えている。

一方、深刻な少子高齢化にともない、外国人労働者の必要性は極めて高くなっている。日本の出入国在留管理庁の資料によると、登録外国人は、2012年の203万人から2019年の293万人と90万人増えた。

南山大学の菅原真教授(法学)はNHKのインタビューで、「日本の社会で多文化共生の方向性が打ち出されている以上、それに沿った形で外国人の住民に地方行政に関わってもらうことは大切」であり、外国人が住民投票に参加するのは法律上問題がないと述べた。


2021-12-09 08:35
http://japan.hani.co.kr/arti/international/41937.html