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患者と医師の相互的な関係に於いて、即ち、医師は患者を信頼し、患者は医師を信頼するという信頼関係に於いて、精神疾患の存在とその治療がある。

実験が示すのは、患者のふりをして医者の信頼を裏切る行為であるが、それは、そもそも「存在」というものを理解していないからこそ為される。

実際に「正気を失っているかどうか」の区別は、自己意識に於いて現れる。そしてまた、自己意識とは他者を通じて現れるものである。

つまり、自身の「精神疾患を患っている」という主張を医療空間に投企することにより試す。そして、医師の同意を受けて客観的存在として精神疾患の存在を確証する。

このように、相互的な関係に於いて、「正気(狂気)か否か」が現れるのであり、「無い」を「ある」と言い詐欺行為を働いて騙すことは何の根拠になり得ない。